新型コロナウイルスの影響で、バリ島は2年連続で、ニュピ前のムラスティとオゴオゴが中止となりました。特にビーチのムラスティが長らくないと、ツーリズムだけではなく、バリそのものの何か大切なものが消えてしまうような気がしますね。
ビーチのムラスティで毎年注目しているのは、儀式やお祈りが終了したときのタイミングです。いわば集団での瞑想を終えたあと、もう夕陽が沈む直前に立ち上がり帰る準備をしながら、周囲と話したり、なんとなく海の方角を見つめたりするときです。緊張から解放されることもありますが、多くの人がいい顔(表情)をしています。優しい表情になり、周囲との何気ない会話がはずみ、ビーチ全体が大きな家族になったようです。お祈りをしたあと皆、少し勇気を得たようで、瞬時に根拠のない希望で満たされてしまったようです。
ビーチの海沿いを帰路につくシーンこそがムラスティの最も美しいタイミングであると思えてなりません。儀式で皆クタクに疲れているのですが、ビーチで煩悩を小さくし、オゴオゴやニュピ、すなわちゼロに向かってさらに神々を意識し、煩悩をぬぎすてニュピへ向かう喜び。その喜びが帰路について歩く1人1人の表情に現れているようです。彼らの喜びはダイレクトに伝わり、周囲で観ている者にも根拠のない希望が共有された瞬間が感じられます。人生の発見があるかもしれません。希望に根拠がいらないのなら帰国後、日本でも希望を発見できるに違いありません。